企画のアイデアが出ない。 そんなときの、企画をひらめかすためのヒント。その2
こんにちは、
のんびり出版プロデューサーの、
おかのきんやです。
前回に続き、今回も、
企画をひらめかせるためのヒントをお伝えします。
今回は、
企画の専門家が、
どう、「ヒラメキ」を得たのか、
そのプロセスを分析してみます。
みなさんが、企画を立てる時の、ご参考になれば幸いです。
自分の才能に不安を感じたときには。
新人アートディレクター・佐藤さんの「ヒラメキ」
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夢の実現に向かい、
毎日、歩み続けているあなた。
順調に成果は上がっていますか?
現在、理想とした目標には届いていますか?
どこかで足踏みをしていませんか?
足踏みなら、心配ないのですが・・・。
もしかしたら、自分の才能に疑問をもったり、限界を感じたりしてはいませんか?
どんな分野でも、能力を向上させようとしたとき、初期段階では、順調に能力が向上していきます。
しばらくの間は、右肩上がりの成長曲線を描きます。
ところが、あるレベルに到達すると、努力に見合っただけの成果が現れなくなります。
いくら努力しても、それ以上のレベルに、ステップアップできなくなってしまうのです。
努力の飽和状態、いわゆる、伸び悩みです・・・。
これは、成長しようとする人に、共通する悩みです。
だから、次のような至言があります。
『伸び悩んだり、才能の限界にぶつかったりしたとき、
「もうダメだ」とあきらめるか。
それとも、
「どうすればこれを突破できるか」と考えるか。
一流と二流は、まさにそこで分かれる』
野村克也(雑誌「The21」)
今回は、仕事に伸び悩み停滞している、新入社員のエピソードです。
1965年生まれの佐藤くん、子どもの頃から絵を描くのが大好きでした。
多摩美術大学を卒業後、大手広告代理店、博報堂に就職しました。
職種は、広告の企画やデザインをする、アートディレクターです。
佐藤くん、社内の移動はスケボーという、ちょっとトンガリ気味の新人です。
「とにかく、カッコいい広告を作りたい!!」
これが、佐藤くんの、理想であり、目標でした。
だから仕事を振られると、
カッコいいものを作ろうと、一生懸命に取り組みました。
無我夢中でやった結果は、凡打と三振の繰り返し。
多分このままでは、どんなに経験を積んでも、平凡なアートディレクターとして、会社の中で埋もれてしまいます。
佐藤くん、なんとか停滞モードを抜け出し、
ホームランバッターになりたいと望みます。
佐藤くんが博報堂に就職したのは、同社で大活躍していた、カリスマ・アートディレクター、大貫卓也さんに憧れていたからです。
ずいぶん昔になりますが、こんなCMを覚えていませんか?
マンモスを原始人の集団が追いかけまわしている、
日清カップヌードルの「hungry?」というCM。
遊園地、としまえんの「プール冷えてます」というCM。そんな話題作を連発していたのが大貫さんです。
佐藤くん、憧れの人が同じ職場にいるのですから、ことあるごとに大貫さんの席に押しかけます。
相変わらず、「カッコいい」作品を目指していた佐藤くん。
自作を大貫さんに見せ講評を請います。
大貫さん、それを見て、さらりと一言・・・。
「カッコつけてて、すごいカッコ悪い」
さすが、カリスマ・アートディレクター、“名コピー”で後輩へアドバイスです。
佐藤くん、この一言に衝撃を受けます。
同時に、感動します。
なぜなら、この一言に自分が停滞している原因。
そして、打開策が秘められていると、直感したからです。
打開策が秘められている。
そして、その答えがわかる機会がすぐに訪れます。
大貫さんの広告チームに、若手として参加させてもらえたのです。
商品は、最初から水で割ってあるウイスキー、
“サントリー・リザーブ&ウォーター”です。
今までの、佐藤くんのやり方だと、さっそく、アイデア出し開始です。
どんなコピーにしたらインパクトがでるか。
どんな広告を打ったら話題になるか。
そんなことを、四苦八苦してひねり出します。
ところが、大貫さんのやり方は、まったく違っていました。
アイデア出しの前に、
「そもそも、ウイスキーってものは、どういうものなんだ?」
「今、日本でのウイスキーの状況というのは、どうなんだ?」というようなディスカッションが延々と続くのです。
佐藤くん、そのときの驚きを、後年このように述べています。
「それがすごくびっくりして、今までだと、ウイスキーはウイスキーでしょって感じで、それはわかった気になって置いておいて。
いきなり、自分がそれを売るためにはと、表現から考えていたんですが。
その表現の前を、こんなに考えるかってことを目の当たりにして・・・。
それを何日もやるんですよ。
そうしていると段々問題点が見えてきたり、いろんなことが自然に見えてきて、いつの間にかそれがアイディアにつながっていったりして」。
大貫先輩の仕事ぶりを目の当たりにした佐藤くん、自分ののアイデアの出し方と、大貫先輩のアイデアの出し方は、まるで正反対だといことに気付きます。
佐藤くんは、商品が決まると、アイデアを無理矢理ひねり出し、付け足していたのです。
ところが、大貫先輩は、商品の本質を知ることで、実に自然な形で、商品からアイデアを引き出していたのです。
まるで、名カウンセラーが、患者の悩みを親身に聞いてやっているうちに、患者さんが、自ら問題点に気付き、勝手に解決策をしゃべりだしてくれるような感じです。
佐藤くんが広告に付け足していたのは、アイデアだけではありませんでした。
なんと、自分の“プライド”や“エゴ”も付け足していたのです。
広告は自分の作品である。
そう信じていた佐藤くん、広告に自分の才能と感性を、てんこ盛りにしていたのです。
だから、商品を見せるための、広告ではなく、自分を見せるための広告になっていたのでした。
「僕の作品って、センスいいでしょ。こんなカッコいい作品作る僕って、すごいカッコいいでしょ。褒めて褒めて」
というオーラが発散していたのです。これでは、広告を見た誰もが引いてしまいます。
この、勘違いを一言で表したのが、
「カッコつけてて、すごいカッコ悪い」だったのです。
佐藤くん、恥じ入りながら納得です。
「ヒラメキ」がやってきた。
ここで・・・。
佐藤くんを大きく進化させる、
「ヒラメキ」がやってきます。
佐藤くんの、唸る「ヒラメキ」。
『アイデアは付け足すものではなく、相手から引き出すものだ』
佐藤くん、この「ヒラメキ」を得てから、とても気が楽になりました。
それまでは、
「アイディアが枯れちゃったらどうしよう・・・」という恐怖感が常にあったのです。
ところが、付け足すのではなく、引き出すのなら、永遠にアイディアが枯れる心配はない、ことを確信したのです。
目の前にあるものに純粋に向き合っていけば、必ず答えが出るということを、偉大な先輩との仕事を通して学べたのです。
例えば、お笑いの一発芸人は、その引き出しを使い切ってしまえば、それでおしまいです。
ところが、同じお笑い芸人でも、明石家さんまさんのように、司会者というポジションに立てば、相手をいじることにより、相手から常に旬な笑いを引き出すことができるのです。
さらに、それを相手が変わるごとにできるので、無限の笑いを引き出すことができるのです。
無限にアイデアが出て、永遠にアイディアが枯れる心配はない、というのは、それとまったく同じことなのです。
その気付きを、
実際に自分の仕事で、
確かめるチャンスがやってきました。
1997年に発売されることになった、ホンダ・ステップワゴンの、広告を担当したのです。ホンダが社運を賭け、年間何十億円という広告予算を組んだ、大プロジェクトです。
競合メーカー数社も、同じようなミニバンを発売予定でした。
当時のミニバンは、新機能がいかに凄いかをアピールする広告が常識でした。
しかし、佐藤くん、あえてその渦中には入らず、ミニバンの本質を突き詰め、アイデアを引き出す戦略を取ります。
当時、家族で移動する車はセダンでしたが、それがミニバン化する過渡期でした。
「そういうことって、今、世の中にとってどういうことなのか?」
「家族一緒に、車で出かけるって、そもそもどういうことか?」
そんな、本質に迫っているうちに、
「性能ではなく、ライフスタイルを提案しよう!」という、アイデアが引き出されてきました。
現在、子どもと熱心に遊んでくれる父親は、クールダディーとか呼ばれ、カッコいい存在なのですが、
昔は、妻や子どもを大切にし、一緒に過ごすことは、“家族サービス”と呼ばれ、小市民的なカッコ悪い行為だ、という雰囲気がありました。
佐藤くんは、それを覆し、
「いや、家族サービスは、実はとても素敵なことなんだ」という、新しい価値観を、広告で提案することにししました。
その本質を、シンボライズし、まとめあげたのが、このコピーです。
〈あったらしいステップワゴンで、こどもといっしょに どこいこう。〉
完成したCMは、性能ではなく、世界観を売る、ブランド広告のさきがけとなりました。
結果的に、この広告は大きな評判を呼び、HONDAステップワゴンは、ミニバン売り上げナンバーワンに輝いたのです。
佐藤くんは、一躍、業界中から脚光を浴びることになります。
今や、日本を代表するアートディレクター、佐藤可士和さん、誕生の瞬間です。
もし、あなたが、 佐藤可士和氏の名前を知らなくても、彼がブランディングを担当した、TSUTAYAのTカード、ユニクロのロゴ、楽天のロゴ、セブン&アイのロゴは、きっと目にしているはずです。
佐藤さん、ステップアップどころか、スーパージャンプアップですね。
スキルアップ即、
ステップとは限らない。
私は、二十歳で漫画家としてデビューしました。週刊誌の連載が五年ほど続きました。
連載が打ち切られることもなかったので、それなりの戦力にはなっていたのでしょが、ヒット作は出ませんでした。いわゆる鳴かず飛ばずの状態です。
そこで、デビュー10年目に一念発起、スキルアップに取り組みました。絵がイマイチだったので、デッサンを基礎から勉強し直しました。
シナリオの教則本を読みあさり、ドラマの作り方を研究しました。
ところが、いくら新しい技術を習得し、それを懸命に磨きあげても、状況は何も変わらなかったのです・・・。
いまなら、わかるのですが、スキルアップしても、即ステップアップに繋がるとは、限らないのです。
スキルアップは、「知識」の問題です。
ステップアップは、「知恵」の問題です。
知識がいくら増えても、私の成長度は、たかが知れていたのです。
なぜなら、私の“本質そのもの”が変わっていなかったからです。
知恵は、人の“本質そのもの”を成長させます。
適切な知恵には、人を飛躍的にステップアップさせる力があるのです。
どんな分野でも、ステップアップを望むときには、「“自分の本質”を成長させるのだ」という、明確な意志を持っことが大切なのです。
「知識」を「知恵」で組み合わせると、「ヒラメキ」が訪れやすくなります。
だから、ステップアップするためには、常に、考えに考え抜く習慣をつけることです。
佐藤可士和さんは、それを呼吸でもするように、日常生活の中でも自然にされているようです。
こんな詩のような、名言があります。
『旅行に出るとき、ふと思いついた。
「自分は直線(的なもの)が好きなんだ」と。
2泊3日の旅のあいだ、車を運転しながら、
食事をしながら、温泉につかりながら、ずっと考えた。
なんで、自分が直線が好きなのか。
何度も自問した。
ずっと独り言を繰り返していた。
帰り道、突然わかった。
「潔い」からなんだって。」
自分にとって、もっとも身近な言葉なのに、
なかなか気づかなかった。
こんなふうに、いつもデザインについて考えている』
佐藤可士和クリエイティブ語録より。
いかがでしょうか。
きっと、みなさんの、クリエイティブな部分が触発されたのではないでしょうか。
それでは、また、お会いしましょう。
さよなら(^-^)ノさよなら(^-^)ノ
おかのきんや拝