出版寺子屋 本を出す方法

このブログでは、本を出す方法を、 丁寧にお伝えします。 商業出版で本を出すことを目指します。 また、 「誰でも本を書ける」 「誰でも本を出せる」的な無責任な言葉で、 高額な出版プロデュースに 誘導するようなこともいたしません。 このブログは、 そのような怪しさとは一切無縁です。 そのことは、ハッキリとお約束します。

ベストセラーは、どのように作られたのか

こんにちは、

のんびり出版プロデューサーの、

おかのきんやです。

きょうは、

ベストセラーがどのように

作られたかと言うその舞台裏を見てみます。

 

 

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ネット上に

ベストセラーについての、

素晴らしいコンテンツが

公表されていたので、

あえて皆さんにも紹介させていただきます。

 

対談されているのは

土井さんという方と土江さんという方です。 

 

どちらも土という字がつきます。

 

読むときに、

ちょっと紛らわしいので、

 

土井さんは、ひらがなで、

どいさん、と書かせていただきます。

 

どいさんは色々な仕事をされていますが、

出版プロデューサーとしても

とても素晴らしい仕事をされています。

 

どいさんがされている、

出版セミナーの生徒さんの中からデビューしたのが。

 

ミリオンセラー

人生がときめく片づけの魔法

の作者

近藤麻理恵さんです。

 

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そして土井さんは、 ミリオンセラー

『伝え方が9割』を編集された、

ダイヤモンド社の編集者の方です。

 

 

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お二人は何も隠しだてせず、

なんとも気前よく、

ミリオンセラーを生み出す

秘訣を公開してくれています。

 

正直素人の方が読んでも、

その凄さが理解できないかもしれません。

 

でも、

もし本を書くことを志すのならば、

この二人の対談は、

 

いつか、

「あーそうだったのか!」

と必ず感動とともに納得されるはずです。

 

では

まるで宝物の箱をぶちまけたような

お二人の対談をどうぞ

 

 



どい:『伝え方が9割』のベストセラー、おめでとうございます!

土江:ありがとうございます!

どい:現在の部数を教えていただけますか?

土江:30万部になりました。

どい:第3編集部というと、土江さんが手掛けられた『面接の達人』の印象が強いのですが。

土江:実は、この4月から新設の第4編集部の編集長になったんですが、『面接の達人』の編集をやった当時って、まだ第3編集部はなくて、別のセクションにいたんです。書籍をつくる編集部じゃなかったんですけれど、手を挙げてつくったものなんです。

どい:ということは、土江さんはもともと書籍編集部所属じゃなかったのですか?

土江:当時いたセクションは、ファイナンシャルプランナーの養成やセミナー事業をやっているところでした。本業のセミナーの事業は頑張ってやりますから、この本をやらせてくださいって粘って粘ってつくらせてもらいました。

どい:なるほど。土江さんが、編集者として最初に手掛けた本を教えてください。

土江:初めて手掛けたのは、公認会計士の山田淳一郎先生が書かれた不動産投資と節税に関する本でした。

どい:最初に出したベストセラーは何ですか?

土江:先ほど名前が出た、中谷彰宏さんの『面接の達人』です。中谷さんも私も、お互いこれが2冊目の本でした。「1回何とか重版しますように!」って、願ってつくった本だったんですけれど、おかげさまで『面接の達人』は、シリーズで、累計395万部になりました。

どい:中谷さんの処女作は、じつは『農耕派サラリーマンVS.狩猟派サラリーマン─会社を潰すのは誰か』なんですよね。僕これ、一冊持っています(笑)。

土江:面白い本ですよね。それはお宝本です。

どい:2作目の『面接の達人』がベストセラーになって、その後は、『フューチャー・イズ・ワイルド』(ドゥーガル・ディクソン)、『ハゲタカ』(真山仁)、『なぜあの人は人前で話すのがうまいのか』(中谷彰宏)、『50イングリッシュ』(サム・パク)、『カエルを食べてしまえ』(ブライアン・トレイシー)、『自分の会社をつくるということ』(経沢香保子)などベストセラーを連発するわけですが、そんな土江さんが考える、ベストセラーの秘訣について教えてください。

土江:それは難しいなあ(笑)。

 

 

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どい:よく、本を見て「これは売れますね」とかおっしゃるじゃないですか。そこのところを教えていただければ(笑)。たとえば、今回ベストセラーになった『伝え方が9割』は、最初から売れると思っていたわけですよね。

土江:「売れる」という確信というより、素晴らしいコンテンツなので、「売らなくては。多くの人に届けなくては」というプレッシャーですね(笑)。著者の佐々木圭一さんを紹介していただいた本田直之さんからは、「この本が売れなかったら、土江さんの責任ですね」って、笑いながら言われたりして、かなりプレッシャーはありました。

そういうことで言えば、

僕は時代を追いかけるのではなく、著者に、いかに心を揺さぶられたかどうかで本を出すかどうか決めていると思います。

お会いした時の衝撃とか、企画書から滲み出てくるパッションですね。その感動とかパッションを、食品で言うと、冷凍保存みたいにして、本の形にする。どれだけ鮮度を保ったまま冷凍するかというのが、編集という事だと思います。解凍したら、つまり本を読んだら、私と同じ感動を読者にシェア出来たら素晴らしいなと思って編集しています。本を読んだ時に、最初、自分が著者に会った時に心を揺さぶられたイメージがよみがえるような本を目指しています。できるだけ純度の高い本になれば、読者に届くと思っています。

どい:最初著者に会った時の感動を忘れちゃう編集者も多いと思いますが、冷凍保存のコツってありますか?

土江:本って究極でいうと、1つのことしか伝わらないので、その1つを何にするか決めるのがポイントですね。

著者としては非常に面白いし、また経営者としても非常に面白いんだけど、自分の力不足で、その1つの切り口がなかなか見つからなくて、本を出すのを待ったり、一緒に切り口を延々と考えたりすることがありますね。

どい:それで土江さん、いろんな著者を待たせているわけですね(笑)。

土江:いえいえ、そんなことは(笑)。

どい:いや、真面目な話、良いテーマを見つけるために、普通の編集者が抱えているよりも母数を大きくして、熟成している期間が長いとかあるんじゃないですか。

会社としては年間何点出すというノルマがあるんでしょうが、だからといって拙速で出した

ら良い本にならないわけですから。セールスでも編集でも、母数を大きくすれば、余裕が生まれることって、あると思います。

土江:本当のことを言うと……面白い方に会うのが好きなので、それをやっているうちに、結果的に(笑)。

どい:結果的に、ですよね(笑)。この記事は、土江さんに待たされている著者も読んでいると思うので、わざとやっていることにしましょう。

土江:やっぱり魅力的な著者に会うと、本を作りたくなっちゃうんですよね。確かに、他の編集者と比べると、人に会っている回数がちょっと多いかもしれません。

どい:人と出会う機会はどうやって見つけているのですか?

土江:20代の頃は、なかなか著者との出会う場面がなかったので、新聞のベタ記事を見て面白そうな人に会いに行ったり、面白そうな会をやっている幹事の人に会いに行っていました。

どい:幹事の方ですか?

土江:大体、会合って、スピーチをする方と主催者の方、この2人が圧倒的に面白いことが多かったので、20代の頃はこの2人を狙って会いに行っていました。最近は、「この人の本を出すと面白いのでは」という形で、紹介が多くなっていますね。どいさんからもいろいろ紹介いただいていますが、魅力的な人の輪の中に入れてもらっているので、そこで著者に出会うことが多く

なっています。

 

 

 

どい:ちょっと話を戻しますが、先ほどお話に出た、1つのテーマを決めることって、とても難しいことですよね。それで出版の成否が決まっちゃうぐらい重要なことだと思います。どうやってテーマを決めるか、ヒントをいただくことはできますか?

土江:本が売れるって、究極でいうとムチャクチャ面白いか、ムチャクチャ役に立つか、そのどちらかだと思うんです。

「週刊少年ジャンプ」は前者ですし、ダイヤモンド社はビジネス書の出版社ですから、主に後者の「役に立つ」本をつくっているわけですよね。

それで、おもしろい、あるいは役に立つというのは、読者によって違うわけですから、

誰にとって面白いか、役に立つかが大事になってくるわけです。

だから、著者の方にも、企画を提案いただく段階で「この本の読者は、誰をイメージしていますか?」と聞くようにしています。

著者の会社の社員でも、知人でもいいんですが、本当に知っている具体的な1人の人をイメージして、その人の役に立つことは何だろうって考えることって重要なんです。

それと、もう1つのポイントは、再現性があること。

「自分にもできる」って思っていただくことが、実はとっても大事なんです。

どい:ただ、できない人間の立場から申し上げれば、「オレは役に立つ本、書いてますよ。土江さん」という方もたくさんいらっしゃるわけですよね。たとえば、弁護士、公認会計士、税理士社会保険労務士など、いわゆる「士業」の方は、基本、役に立つものを書いているはずなんですが、

売上は人によって月とすっぽんほども変わる。一体何が違うのでしょうか?

土江:僕も売れない本たくさん作っていますよ(笑)。…っていったらマズイか(笑)。基本的に、著者の方とプロの編集者が一生懸命作っていれば、本の中身はどれも面白いはずだと思います。ただ、大きな書店さんに行かれるとわかると思いますが、蔵書数が百数十万冊あったりする。そんな巨大な店舗で、1冊の本に出合うのって奇跡に近いと思うんです。ミュージカルが好きなので、ミュージカルのオーディションに例えて言いますと(笑)、書店で出合って手に取るまでが第1オーディションで、ぱらぱらと読んで中身が素晴らしいと思うのは、第2次オーディション以降のことだと思うんですね。ミュージカルと同じで第1次オーディションの倍率はめちゃくちゃ高いんです。

例えば、歩いていて、どいさんが素敵な女性とすれ違うとしますよね。その時、「あっ、なんか素敵だな」って瞬間に思う。それと同じ感覚で読者の方って、本を手に取られていると思うんで

す。「これは自分のために書かれている本じゃないかな」と瞬間的に恋していただくかどうかが、勝負だと思うんです。

どい:それは、やはり装丁とかタイトルということになりますか?

土江:そうですね。装丁、タイトル、それから帯の文言ですね。

どい:さっきの女性の話で言えば、ただすれ違っちゃっただけよりも、なんか声掛けたくなっちゃって、実際に声掛けちゃいました、ぐらいがいいわけですよね(笑)。それって何がポイントですか?

土江:やはり何か、その人がずっと課題に思っているキーワードに引っ掛かることが重要でしょうね。タイトルあるいは帯のところで、自分がコンプレックスに思っていることや、無意識で気にしていることに引っ掛かる言葉があれば、読者は手に取るんだと思います。「あ、これはわたしのために書かれてある本だ」

「わたしにとって必要なことが書いてあるんじゃないかな」って。

どい:『伝え方が9割』は、白地に墨のベーシックな装丁ですが、オビのところにピンクを多用しています。これはなぜですか?

土江:これは、装丁家の提案によるものです。

どい:装丁家はどなたですか。

土江:水戸部功さんです。

どい:ベストセラーとなった『「超」入門 失敗の本質』と同じ装丁家ですね。土江さんからの元々のリクエストはどんな感じだったのですか?

土江:もともと、手書きのラフでお渡しした時は、タイトルは横書きだったんです。シンプルな白地に墨の装丁がいいということでお伝えしました。そしたら、縦書きで「ドーン」という感じの、とても強いインパクトのある装丁が上がってきて、「こっちの方が断然いい!!」と思いましたね(笑)。墨にピンクという組み合わせは、実は90年に編集した初代の『面接の達人』が同じ組み合わせだったので、シンクロニシティを感じました。おまけに著者は同じ広告会社の方でしたし。

どい:そうか! すごい偶然ですね。

土江:装丁を見て、運とか縁とかあるのかなぁ、って勝手に思っていました(笑)。

どい:このピンクはとても目立つピンクですが。

土江:これはあまり弊社では使わない特別なインキなのですが、それを2度塗りしてもらってできあがったピンクなんです。色校正ではじめて実際のピンクを見た時に、「これは書店で目立つ!!」と思い、嬉しくなりました。

どい:そうしないとこんな風に濃く出ないということなんですね。確かに、ものすごくビビッドなピンクですね。色に関して言うと、今、ど真ん中なのはピンクという感じがしますね。震災で流行ったブルー以降、シンプルな白、オレンジと色が変化してきて、まだ赤には早いけれど、というタイミングです。

土江:どいさんは、全体をご覧になっているから、感じられているんですね。装丁に関しては、ずっとシンプルなものが来ていますよね。

 

 

 

どい:タイトルに関しては、最近、短いものが売れている感じがしますね。

土江:もちろん、タイトルは短い方がいいですね。文字を目立たせるためにも、4~6文字くらいが理想だと思います。そのほうが、タイトル文字も大きくなるし、新聞などの宣伝でも目立ちます。

ただ、長いのが流行ることって、確かにあります。短いタイトルの本の山の中に、かなり長めのタイトルの本が混じっていると、かえって目立つということもありますよね。たとえば、『誰でもできるけれど、ごくわずかな人しか実行していない成功の法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本は、逆張りでうまいな~と思いました。どいさんは世代が違うかもしれませんが、昔で言えば、WANDSの『愛を語るより口づけをかわそう』みたいな、詩のような長いタイトル。やるなら徹底した方がいいと思いますね。

どい:タイトルに関して、何か法則みたいなものはありますか?

土江:強いキーワードを組み合わせるという事を意識することもあります。2つか3つぐらいの強い要素を入れて組み合わせたり。

他社の本ですが、四角大輔さんの『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)は、「自由」「20代」「捨てる」という3つの強いキーワードが見事に入っていますね。担当しました『なぜあの人は人前で話すのがうまいのか』も、話し方に、「人前で」というキーワードを組み合わせているので、読者の方にニュアンスがより伝わったのではないかと思います。

どい:目次に関しては、先日インタビューさせていただいた御社の和田さんが、他の編集者と議論することの重要性を語ってらっしゃいましたね。

土江:最近、ダイヤモンド社では、タイトルや目次の構成を、チームで練り上げる習慣が根づいてきているように思います。ここ数年特に顕著だと思うのですが、「他の人の企画を自分の企画と思って一緒に練り上げる」雰囲気があるような気がします。じつは今回の『伝え方が9割』も、編集の飯沼の知恵を借りながら作りました。

どい:ベストセラーとなった『大富豪アニキの教え』や、『バカでも年収1000万円』を手掛けたあの飯沼さんですね。最強タッグによって作られたタイトルですが、ポイントは何でしょうか?

土江:タイトルは、著者と3人で、それこそ100以上は考えたと思います。

『伝え方が9割』は、中身をずばり説明したタイトルじゃなくて、中身を読んだらいいことが起こるな、と読者に想像させるタイトルだと思います。妄想していただけるタイトルと言っていいかもしれません。今回は、その試みがうまくいったんじゃないかと思っています。

どい:装丁に関しても、ピンクのおかげで相当目立っていますが、やはり競合書との違いも重要ですか?

土江:装丁というのは、どうしても人気の装丁家のところに依頼が集中することも多いので、平台に同じ色、テイストが集まってきがちです。そこであえて、店頭の平台が白っぽくなった時には、違う色を使うと目立つ、ということもあると思います。

どい:あくまでそこは相対的なものだということですね。参考になりました。このBBM Interviewsは、若手編集者を応援する意味もあって続けているのですが、

土江さんから見て、当てる編集者とそうでない編集者の違いは何ですか?

土江:それは、また難しい質問ですね(笑)。一緒にやっていた編集者でいうと、たとえば高野倉と和田。2人とももともとは雑誌の人間ですから、最初は勝手が違って苦労もしたと思いますが、今はベストセラーをいくつも出しています

どい:高野倉さんは、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』、和田さんは『采配』や『雑談力が上がる話し方』の編集者ですね。

土江:2人を見ていて思うのは、圧倒的な量をこなすと、ある日突然に、本当に質に転化するんだなということ。彼らを見ていてそう思いました。自分の限界、もうこれ以上考えられないというところまでやれば、その1冊はたとえ失敗したっていいと思うんです。特に20代は。

とことんやれば、失敗の原因は自分の手抜きじゃなくて他にあると考えられるけれど、そこで手を抜くと、どこがダメでヒットしなかったのか、わからなくなるんですよね。それが一番、怖い。

編集者に大事な直感が生まれてきませんから。

そして、もっとも大切な「編集者としての自分を信頼する気持ち」。自分のことを信じられていないと、いつまでたってもひとの意見に左右されてしまうと思うんです。やはり、最終的に結果を出す人は、編集者でも著者でもそうですが、粘り方が尋常ではないと思います。ちょっと、「その粘り、おかしいんじゃない」と思うレベルです(笑)

どい:高野倉さんは、株本でも当てている方ですが、何が違いますか。

土江:ブームの時、株本を買うのは初心者です。

高野倉は初心者向けの本をつくるのがうまい。

ちょっと天才的なところがあると思います。

彼の編集は、おにぎりでいうと、ふっくら握っている感じです。

おにぎりって、ぎゅっとかたく握ると美味しくないですが、軽く握るとふっくらして美味しいじゃないですか。

彼の作る本は、図もシンプルでこわくない。

そして、カバー周りに「憧れの具体的な目標」と、「私でもできるかな」というスタート地点が用意されている。

スタート地点が高くないんです。

このスタート地点が高くないというのも一つのポイントかなと思います。

株本だけに限らず、たとえば経営者が著者の本でも同じ者のレベルとそう変わらない時期があったはずなんです。僕が作った経沢香保子さんの『自分の会社をつくるということ』でも、ご自身の20代の頃のダメだった体験を綴ってもらったから、共感していただけたと思います。

※参考:『自分の会社をつくるということ』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478733015/businessbookm-22/ref=nosim

どい:編集者を見ていると、やはり当てる人は専門ジャンルを持っている、という印象がありますが、やはり専門を持つことは大事ですか。

土江:同じジャンルをやっていると、直観が宿ってきますよね。

ただ、専門が1個だと時代が変わった時に困るので、たとえば2つか3つくらい得意ジャンルを持っているといいと思います。

年間に出す本をひとつのポートフォリオとして考えた場合、8割は自分のコアで稼ぎ、あとの2割は新規事業で稼ぐ感覚でいるのがいいと思います。

どい:事業と同じですね(笑)。土江さんがビジネス書でベストセラーを出せるのは、昔編集長をやっていた『type』の経験もあるのかなあと思っていますが、その点はいかがですか。

土江:『会社図鑑』や『大学図鑑』を手掛けた浜辺というのがいるんですが、彼と『会社図鑑』を作った当時、『面接の達人』のOBとか、個人的な人脈で、20代後半の人にたくさん会ったんですよね。当時は、団塊ジュニアがちょうど20代後半でした。

『type』創刊の時にも、創刊キャンペーンのアンケートを1000人ほど取りましたから、かなりの数、人には会っていると思います。業種別にいろいろ会いましたし、「憧れの人は誰ですか?」とか「仕事上の不満は?」「給料の不満は?」などかなり細かくアンケートをとりました。特集のために、サラリーマンの給与明細を何十枚も集めたこともありました(笑)。それは、いま本の企画を考えたりするときのバックボーンになっているかもしれません。

どい:土江さんの著者を選ぶ基準が気になるのですが、教えていただけますか?

土江:圧倒的な魅力を持っている著者の方というのは、素晴らしいミュージカルを観た時のような感動を与えてくれるものです。今まで培ってきた半生の結果が圧倒的で、「この著者の経験をシェアすると、きっとこんな人が喜ぶだろうな」と妄想できる人です。

最初の企画書は、全然完璧でなくていいです。

その妄想するためのヒントが書かれてあればいいんだろうと思います。

『伝え方が9割』の場合で言えば、伝え方をちょっと変えることによって、今までNoと言われていたことが、Yesになっていく。それで、「伝え方が下手だった、私のような人間の人生が、ちょっとでもプラスにかわったら素晴らしいな」とイメージできました。

これが、たとえば住宅ローンの借り換えの本であったとしても同じで、1万部売れれば、4人家族だとして、4万人。住宅ローンの無駄をなくした分、土日に美味しいご飯を家族で食べられるかもしれない。

日本全国で4万人の家族が。そういうことを妄想すると、編集意欲が湧いてくるんです。

どい:『面接の達人』は、土江さんがコミュニケーション下手だから生まれた本だと聞いたことがありますが、本当でしょうか。

土江:僕は就活も相当苦労したし、人前で話すのも苦手でした。スピーチもうまく終われない人間だったので(笑)、コミュニケーション下手だったと思います。

ベストセラーとなった『なぜあの人は人前で話すのがうまいのか』には、

<スピーチの時、これで入って、これで終わるということだけ決めておけば、安心>

という具体的なアドバイスが載っています。

この一言に出合えて、今では300人の学生の前でも話せるようになりました。

※参考:『なぜあの人は人前で話すのがうまいのか』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478003491/businessbookm-22/ref=nosim

編集者にとっては、「ダメな自分」って大きな武器になると思います。自分がコミュニケーション下手なので、苦手な人しかわからないポイントを、読者の気持ちになって、編集することが出来るんじゃないかと思います。

どい:今回ベストセラーとなっている『伝え方が9割』について、編集のポイントを教えてください。

土江:この本は、佐々木さんの上智大学での講義がもとになっています。

広告業界関係の方にしか売れない本、カッコ良すぎて読者を限定してしまうような本にならないようにしましょうと、著者の佐々木さんとは話をしました。

このコンテンツは、老若男女、オフでもビジネスでも使うことのできる方法なので、一般

の方向けにつくっていきましょう、と。

プロフィールに「国内外51の受賞」と書かれてあると、そんな偉い人は「自分とは関係ない。もともと才能があったからできたんだろ」と思われてしまうので、「もともとは伝えることが苦手で、コピーイターとして配属されて苦しんだこと。

ストレスから1年で体重が15%も増えて、あごもなくなったこと。

そんな時、世界中の名言を見続けて、伝え方には技術があることを発見し、人生が変わったこと。その伝え方のレシピを今回は皆さんとシェアします」ということを、頭でご紹介して、

「これは皆さんのための本です」と伝えました。

原稿はあえて、もともとはもっとあった練習問題の数を削って、「難しい」と思われないように

しました。1Pは15行にして、段落ごとに1行あけるようにし、ぱっとみてやさしく感じていただくようにしています。そして方法の説明ごとに、まとめをつくって、学びを復習できるつく

りにしています。今回、作っていて思ったのは、やはりプロのコピーライターの粘りは半端ではないということ。佐々木さんには何度も何度も書き直していただいたので、びっくりするぐらいスルッと読める本になったと思います。2年半もかけて書き上げた本がわずか1時間で読めちゃうと言われました、と佐々木さんが嘆いていましたが(笑)、とってもとっても大切なことをさらっと1時間で読んでもらうために、2年半の時間が必要だったんだと思います。本をあまり読んだことのない人のために。

どい:実際の読者層はどの辺ですか?

土江:読者層が広いので年齢を平均すると、30代後半になってしまうのですが、一番多い読者年齢は26歳と聞いています。この読者層に近い、30代前半の営業部の遠山がこの原稿に惚れてくれて、積極的な営業活動をプランしてくれました。本が出る前に、営業部の中にこの本のファンがいてくれたことも大きかったと思います。本当にびっくりするぐらい買っていただいていまして、7刷目が10万部と聞いた時は、電話口で「えっ!」と大きな声が出てしまいました(笑)。

どい:今回もまた、ベストセラーを出されたわけですが、そんな土江さんが今、仕込んでいるタイトルを教えてください。

土江:本田直之さんの『あたらしい働き方』という本が、6/7に出る予定です。パタゴニア、ザッポス、エバーノートなどの新しい働き方を実践している日米の先端企業の20社に本田さんと一緒に取材しました。これからの働き方について論じた、興味深い一冊です。いままでの古い価値観にとらわれない新しい働き方がすでにもう始まっていることを、日本の多くの方に伝えた

いと思っています。ぜひ読んでいただければと思っています。

※参考『あたらしい働き方』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478023808/businessbookm-22/ref=nosim

どい:これは注目ですね。ぜひ読ませていただきます。本日は貴重なお話、ありがとうございました!

土江:ありがとうございました!

 

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いかがでしょうか。

きっと、みなさんの、クリエイティブな部分が

触発されたのではないでしょうか。

それでは、また、お会いしましょう。

さよなら(^-^)ノさよなら(^-^)ノ

   おかのきんや拝